老老介護

定年後 私たち夫婦は 私が遅い朝に自宅を出て別宅として借りている小さな部屋に出かける 部屋には書籍パソコンなどがおいてあり それを使って遊んで 夕方になると帰るということがルーティン化していた それは 水上勉という有名な作家が ある雑誌に 一人遊びの楽しさ? という記事を書いていた 何でも自由にできる部屋があれば楽しいだろうと同感したのがもとで 自宅からあまり遠くないところに小部屋を借りたのがはじめであった 部屋を借りるのはお金がかかることになるので家内が反対すると思いきや 二つ返事で賛成してくれた 私が現職の時 昼間努めて夕方に帰るという生活が板についていた 定年になり毎日私が家にいることが負担であったからだろう 「亭主丈夫で留守がいい」 とは主婦の本音を言ったものだろう

部屋は平成2年か3年頃借りたので 30年以上その小部屋を利用していたことになる

この生活スタイルは愚かにもなんとなく 永久的に続くもののように思っていて いつか老化によって続けられなくなってしまうことなどはあまり考えたことがなかった

 しかし 家内が下北沢の商店街で買い物をして帰るとき転んで 歩くときに痛みを感じるようになった それでもあまり重大に感じず買い物などをしていたが また転んだ 外科の診断を是非受けなさいと提案したが聞いてくれない 私も何回か転んだのだが歩けなくなることは免れていた だが このときからすでに 老老介護が始まっていたのだ 足が痛い家内は買い物の回数が減り 私がメニューを聞いてスーパーやコンビニに出かけることが多くなていた

事故が起こったその日のこと 私が帰りがけにスーパーで買い物をして帰宅したのだったが 自宅には3段の石段がある 一段目二段目三段目を登ろうとしたとき脚の力が弱く登り切れず後ろに転倒 しまった 大ごとが起こるぞと絶望的な思いが倒れる瞬間にひらめたまま下の段まで転げ落ちていた 起き上がれなかった 幸い家の前の通りは人通りが多く 親切な通行人に助けられて家に入ることができたが この事故を境にして老々介護の生活環境ががらりと変わることになる