N先生と牧野富太郎博士

私がE女学院にはじめて務めたとき 1学年のクラスは2つだけだった 理科系の先生は専任は 化学のH先生 生物のN先生とK先生それに物理の私と他に講師の先生がいらした

N先生を思い出すと声が大きく隣の教室からでも聞こえるくらいで とにかく元気な方でお祭り というあだ名が付いていた 一度先生の授業を見学させて頂いたが 黒板に描く絵がこれまた上手で 私が書く直線的な物理との図とちがい細胞などの絵は曲線が多い それをカラーチョークを使って実にうまく書く なるほどこれは名講義だと思った

 

植物学者 牧野富太郎博士をモデルにしたNHKの朝ドラ らんまん を時々見ている 博士の植物学への情熱はすさまじいもので 植物学と言えばまさに神様的な存在だった

しかし 時代は移り 2重らせんの発見DNAの発見と 趨勢は分子植物学が台頭してきた

N先生は これからの生物学は 牧野富太郎先生の植物分類学などが主流であったが この学問はもう古く 今やDNAを構成している (A)アデニン (T)チミン (G)グアニン (C)チミン の並び方などを研究する 生物を構成する分子の研究が主流になると時代が来たのです と教えてくれた A,T,G,Cとははじめてきく言葉であった 

葉や茎根 花 などから分類して行く学問は主流から脱落していまいました 牧野先生を尊敬していたと思われるN先生はいかにも残念そうであった

しかし リンゴ と ナシ は同じバラ科 サクラ と モモ スモモなどもバラ科など植物分類学は身近に教えてくれる 一般人にはちっとも古くささを感じない

N先生は元気そのものであったので長生きされると思っていたが いがいにも 癌のために理科の先生としては一番早くなくなられてしまった