この年になると 歩くのがとにかく大変になる 努力して歩いているという感じである 周囲を見渡しても歩く速度はみな私より速い だから私は何人もの人に追い越されてゆく かなり年配の人がゆっくり歩いている あの人と同じぐらいの速度だろうと思っていると驚いたころにその人との距離がだんだん開いてきた 私の方がずーと遅いのだ あんな年寄りより遅いとは 私はかなりがっかりした
なんで歩きにくいのだろう 私の上体が前かがみになってきたつまり腰が曲がってきたために体重が不均衡にかかり それを補うために余計な筋肉を使うためだろう 杖を使うといくらか改善されるのだが まっすぐな姿勢をとれば重力が均等にかかり歩きやすくなるらしい それで時々休んでそのとき体を伸ばすように心がけるといくらかよくなった
バスに乗ろうとして待っていたときに あとから来たよぼよぼのおばーさんが私を見て挨拶してくれた そして こまめに水を取ってくださいねと注意してくれた 明らかによぼよぼ度が私の方がひどく思われたらしい ありがとうございますとお礼を言ったが やれやれと複雑な気持ちだ
しかしあるとき 反射率が良いガラスが鏡の様な役目をしている商店のガラスどに写ったわが姿を見て愕然とした 腰の曲がったよぼよぼのじーさんが写っていた なるほどこれでは じーさんそのもので あのおばーさんが注意してくれたのも分るというものだった
それ以来 時々背伸びをして上体を伸ばしているのだが効果がいくらかあるようで歩くとき少い楽になったような気がする