浅草

前回 浅草のことに関する芝居のことを述べたので 私が実際に経験した浅草について述べたい 時代は芝居の時代より少しの後の昭和10年〜14年ごろである
そのころ浅草六区では常盤座とか金龍館 松竹座などの芝居小屋 電気館 日本館等の活動写真館がたくさん揃っていて いつも人で溢れかえっていた
松竹座では エノケン(榎本健一)の喜劇 不二洋子の女剣戟などを 電気館では 林長次郎(後の長谷川一夫)の雪之丞変化を見た記憶がある
常盤座は “笑いの王国”という喜劇集団の常設館であった
主な役者には 渡辺篤(現在の渡辺篤史とは関係ない?) 生駒雷遊(徳川無声と並んで人気のあった無声映画の弁士) 武智豊子(女エノケンと言われた) 大辻司郎(漫談家) 横尾泥海男(でかお) 関時男(知らないかもしれませんね)などがいて 喜劇を演じていた
演目は 3部に分かれていて 1部は 現代喜劇 2部は レビュー 3部は髷物ナンセンスと称している 時代劇であった レビューはラインダンスやタップダンス それに歌も含まれていて 田谷力三テノールもここできけた 当時 新しかった 淡屋のり子 のブルースも聞けた 
田谷力三が出てくると “タヤー”と大向こうから声がかかる 
とにかく笑いの王国であるから わらいにわらって 面白かったと満足して帰った 
笑いの大国は 古川ロッパなども中心に出ていたが 私の見たときはすでに ロッパはいなかった