事故(4)

家で そっと貼り付けてあるガーゼを取り除き 鏡を使って頭部の縫い具合を見てみると 金属のホッジキスの針が傷を縫って綺麗に6本並んでいた まるでサイバーネティク人間のようだ 頭より腕のほうが痛い 痛みが時々襲ってくる 濡らさないようにお風呂に入るのは大変だ 大きめのビニール袋を右手にかぶせる 頭は洗ってよいが 洗ったあとにマキュロンで消毒しなさいとのこと 左手だけで洗うのには限度がある 体に洗わない部分が出来るが 仕方がない 暑い夏でなければ風呂などに入らないだろう でも汗をかくので入らないわけにはいかず カラスの行水を繰り返すことになる
困るのはギブスで覆われている手が痒くなる事だ 先生にこれを告げると 物差でも端から入れて掻いてくださいとのこと 外傷ではないのでこんな事をしてもいいのである
頭のホッジキスは2週間ぐらいでとれる 取るのになんとペンチを使うのである 取れた後は消毒もしなかった
ギブスはうっとうしく 出来るだけ早く取りたかったが 一ヶ月かかった 取り除くときにどうするのだろうと思っていると小型の電動のこぎりを使う キューンと音を立てて ギブスを切ってゆく 中にある腕が切れないのは熟練であろうか でもヒヤヒヤした
取れた後 腕を洗ってくれる 心もとないが これで自由になるのかと思っていたが 再びパックから濡れたガーゼを出してこれを腕の半分に押し当てて包帯を巻いた 待つ事しばし 包帯を取り去ると腕の形にぴったりした 副え木 が出来上がった つまりギブスから副え木に変わったのであった 濡らしはいけないには同じだが かなり精神的にも楽になった