映画監督でもあり脚本家である 新藤兼人 は大変長生きで100歳までいきた 生前テレビのインタービューアーが 最近お考えになっていることはどんなことですか と聞いていた するとかれはいろいろとありますが やはり死が近づいていることを考えないと言うと嘘になりますね と言っていた この時はそういうものかと聞き流していたが 自分がその高齢になってみると 死を考えないというと嘘になるとおもう さて どんな死に方なのか 突然なのか 病院で長々と過ごした後の死かなどなどである こんなことを考えても決して楽しくはないのだが 立ち上がるときにうまくできなかったりすると 自然といやでもそのことを思い出させてくれる 頭にはいいてくるので仕方がない
この間 気が付くと自分の顔を触っていた 皮膚の下の骨の形がわかる とがった顎の骨やほほの骨 目玉をおさめておく眼窩などである 額は大きく 頭蓋骨を想像できる そして 心の中でささやいた おい おまえは私が死んでも残っているだろう よろしく頼むぜ
しかし 人間の細胞は絶えず 新陳代謝をおこなっていて 
腸内の細胞は数日 肌は1か月 血液は4か月 骨の場合5か月で 古いものが新しいものに置き換わるという
だから 頼まれた骨は5か月たつと いなくなってしまう だから今の骨はそこらに転がっている鉛筆より生命が短い と言って鉛筆に託してみてもどうにもなるものでもない
結局 死とは永遠に不可知で解くことができない不思議なものであると考えざるを得ない