懐かしの味(トンカツ)

私が学校に勤め始めたとき 戦前からの先生方が かなり居られた N先生はそのうちの一人で 料理の先生だった 先生は外国で料理を勉強したということをお聞きした
クリスマスのとき 先生達がキャフェテリアというところで集まり パーティを開いた サラダ菜の上に肉の焼いたものを載せた料理が出た 私は肉だけを食べてサラダ菜を残していた そのころ日本にはまだ生野菜を食べる習慣があまりなかったのだ サラダ菜は単なる飾りだと思っていた N先生がサラダ菜も 西洋では食べるものです と 教えてくれた 
それから2,3年経ったころ 先生との会話が たまたま トンカツの話になった “日本のトンカツは肉が厚すぎますね 西洋風のものは もっと薄いものです そして あんな トンカツソースのような どろどろしたソースは使いません”
なるほど 戦前からの母のトンカツは 肉がもっと薄かったと思う そして技術的な問題だと思うが 出来上がったカツをナイフで切る時 よく肉と衣がはがれた でも 大変うまかった 使うソースは ウスターソースであった
10年も前 渋谷のカメラのサクラヤのある付近に ニュートーキョウ があった そのメニューに カミカツ というのがあり ガラス越しのサンプルには大きな薄いカツが皿に載せてある カミカツとは 紙のように薄いカツの意味なのであろうか? 
食べてみた かなり昔なのでよく憶えていないが 肉が薄いので 肉の割り に 衣が多く 衣の味を楽しむものであったとおもう 衣の味は大変大切であることがわかったが 懐かしい味とはすこし違っていた