石板

NHKの特集番組は 明治の教育制度を取り扱っていた その中で児童がノートのかわり石板を用いて書いているシーンがあった
石板は黒いスレートを木の枠で囲ったもので 児童はこれに石筆という蝋石を鉛筆状に削ったもので書く これを私は山形県の小学校で実際に使っていた
字を教えるのに 先生が黒板に ハナ ハト マメ などと きれいな模範的な字で書く 生徒はこれを真似して石板上に書く 生徒は書いたものを一人ずつ先生に見せに行く 不完全な者には 個人指導をする 生徒が多くないのでこんなことができた
 さて算術(算数)の時間
 先生は 黒板に
          1+1=
          2+1=
          3+2=
などと書く そして生徒はこれを石板に書いて答えも書いて先生に見せに行く
これに対して私は
          1+1=
          2+1=
          3+2=
と書いて先生に見せに行った 
当然先生は 答えも書きなさいといった 思い込みが激しく多分こうだろうと先生の話をよく聞いていなかった私は 字が汚いからかなと思い
もう1度同じことを書いて見せに行った 結局 字の勉強と同じに考えていたのだ
こんなことをまごまごやっているうち時間が来てしまった
この失敗は母に言うのが恥ずかしくて 親しい女中さんに話した 女中さんは親切に足し算を教えてくれた なるほどわかりました 私の算術の最初の先生は女中さんだったのだ
その後 私の家族は東京に移り住む 女中さんは私が小学校を卒業するころまで一緒にいたが そのご嫁に行った その後どうしたであろう もし生きているなら一番会いたい人である