アウフヘーベン2

昭和という国家で 司馬遼太郎氏はアウフヘーベンをどのように使っているかというと 一番目は 福沢諭吉の 脱亜入欧 という言葉の弁護である 戦後 世間では福沢先生は偉大な方だが 脱亜入欧 は受け入れられないと評判を落とした 脱亜入欧は字の通りアジアから抜け出してヨーロッパの様にしましょう ということである これがあるためかつての日本人に中には*野郎自大 と言うかヨーロッパ人を尊敬しているが他のアジア人や文化を軽んじている傾向があった

昭和をまともに通過した私も日本にそのような風潮があったことを認めざるを得ない

福沢諭吉は上海を訪れたとき ヨーロッパ人が威張っていて 苦力(クーリー)となって働いている中国人をステッキで打っているのを目の当たりにした この個人的な経験から このままでは やがて日本もこうなるのではないかとアウフヘーベンした

つまり個人的な体験を 次元を挙げて公的な考えにするという事にアウフヘーベンを使っているらしい

もう一つは 太平洋戦争で 初戦の時 パールハーバーアメリカの艦隊に大打撃を与え マレー沖海戦で 英国艦隊の主力 プリンスオブウェールズ レパルスを 日本の航空機により撃沈させたとき 一部のインテリ層がこれは今までの欧米に適わないと持った考えを変えなければならない これは近代の超克だ 今までの考えを否定して乗り越えろ アウフヘーベンである

司馬遼太郎氏のアウフヘーベンは 何か事態が起こった時に一段と次元を挙げたり広げたりして論じることのように用いていると思われる

前にお話した小池さんの築地と豊洲の問題は両方の折衷案のようなもので本当のアウフヘーベンとは言いにくいとしたコメントした人もいます

 

*野郎自大とは 中国の故事で 野郎というまことに小さな国の人が世界を知らず 自分が一番偉いなどと考えていたことから

 

PS 昭和という国家という本はNHK出版から出ている本で 昭和初年から敗戦の昭和20年までを なんでこんな無謀の戦争につき進んでしまったのかと 嘆きと分析が主題になっています 

私の経験では 昭和初年から12年ぐらいまでは軍国主義には違いなかったが 流行歌に「忘れちゃいやよ」などがありそれほど悪い時代とは思わなかった 日支事変が起こってからが 流行歌なども軍歌一色になり だんだんひどくなったと思っています