プロジェクトX

数年前までシリーズでやっていた プロジェクトXというNHKの番組があった 主に高度成長期の日本の技術者がいかに努力して その工業製品を完成させたかの粒粒辛苦の軌跡を描いていた 大体の筋道は 技術者たちが 目的に向かって行動するのであるが ほとんど必ずといってよいように手痛い挫折を味わう それでも挫けず周囲の毀誉褒貶にもめげずついに一致団結完成するというような物語である
この番組を時々見ていた私は なるほど日本人が敗戦してあれほどの荒廃から当時 世界第2の経済大国になったわけが分かるよう気がした そして いつしか 日本が科学技術では世界のリーダーになってゆくかもしれないという幻想のようなものが芽生えていた 私も科学技術を専攻した学徒の1人として誇りに思っていた
アメリカのスリーマイル島原発事故があった そして旧ソ連ではチェルノブイリ原発の大事故があった そのとき感じたのはこのような事故は日本の優れた技術なら決して起こらないはずであるというか確信であった
3月11日の大震災はこの私の確信をもろくも崩壊させた 地震だけなら原発を停止できたと思う これはほぼ同様な条件の女川原発がなんでもなかったことでも推量できる しかし津波電源喪失 メルトダウンまで起こしてしまった その損害は計り知れない 日本は決して負けないと信じていた日本の敗戦のときと同じ喪失感を味わうことになった
太平洋戦争では大和魂だけでは圧倒的な物量には勝てない事を知らされ 原発では世界一級の科学技術だと思っても自然の膨大な力には勝てなかったのだ
山本太郎のように どんな科学技術でも完全に制御できない原発は直ちに全部を廃炉すべしという人々がいる しかし 原子力の平和利用は人類が営々として築いた技術である これを一挙に止めてしまうのはどうか 原発に関わっている大勢の人たちは プロジェクトXに出てきた人々と同様 高度成長を支え一生懸命に自分の責務を果たしきた人たちである 再生なエネルギーにかえるにしても ソフトランディング的方法をとるべきであると思う