葉桜

        よしさらば 散るまでは 見じ 山桜
                 花の盛りを 面影にして
誰か ご存知かもしれないが 私は この歌が国語の古文の教科書に載っていたことをおぼえている しかしどこからの出典なのか 記憶にない だから そのままの意味なのか 何かの比喩的な歌なのか わからない 私の頭に独立して入っているものである 
せっかく きれいに咲いたものが やがて散ってゆく そのはかなさ 物悲しさを 見るに忍びないので 満開の花の印象を眼に焼き付けておくだけにして 去って行こう これが 少年だった私に かなり印象的に感じたのだろう
散るまでは見し といっても 公園の桜の道を毎日通っているので 見ないわけにはいかない 桜は散る 散る桜もそれはそれとして いいものである はらはらと散る桜には そこはかとなく哀愁の 滅びの美学がある
       葉桜に 来年 又な と 話しかけ
おやおや 柄になく 感傷的になりすぎましたようで

公園の葉桜