認知症

kutuzawa2005-06-10

毎年必ず来ていたM先生からの年賀状がその年は来なかった 認知症の始まりであった 私が私立の女子高に務めるとき 院長の面接に次いで会ったのが保険教諭であるM先生であった 非常にはきはきした 少し切り口上的だが気品があり よどみなく話す 私のようにいままで男性ばかりの社会にいた野人に務まるかなと恐れを感じた
私は喘息もちで 何とかしてこれを直したいと思った ある病院でインシュリン ショックを体内に起こして体質を変える療法を紹介された インシュリンを注射するために病院に毎日来るのは大変でしょうから 学校の保険の先生に頼んでやってもらいなさいと病院からの話があり M先生に病院からの書類を示すと M先生は インシュリンのような怖い薬を毎日打つようなことは私にはできません ショック療法というのは確立した療法でもないと思います と断然拒否された 残念に思ったが 後から考えるとM先生の判断は正しかった思う このショック療法はまもなくきかなくなった インシュリンを打ち続けていたら副作用が出たかもしれない M先生には感謝している 
学究的な先生で 時々学会に発表をなさっていた その先生がなぜ認知症になったのかと思う 
最初M先生を見舞ったとき 私の名前を覚えていたと思う 次にお会いしたときは少し体調が悪いらしく顔つきが暗く感じたが 我々の見舞いを大変喜んでくれた
今回の見舞いはさすがみなの名前を述べることはできなかったが ごく親しい人物が会っているということはわかっているようだった 誰かを聞かれて答えられないとき 申し訳なさそうな顔をする 認知症になっても 相手を気遣うがわかった 
別れる時 また来るからね といって握手をすると いつまでも手を離したがらないM先生見ると悲しくなった