まさかの

女子レスリングの女王 吉田沙保里が敗れた 15年間負けなし 33歳になっていたがリオで金を取るのは間違いなしと周囲も本人も思っていた その絶対女王が敗れたのだ 敗れた瞬間 吉田は立ち上がれず顔を伏せたまま泣いていた もう人目もはばからず表彰式の時も泣き通しであった その悔しさがひしひしとよくわかった
周囲では 吉田を慰めてよくやった立派な戦いだった 今までの功績をたたえ挙げた元気づけていたが 吉田は顔をくしゃくしゃにして泣き続けた いくら慰められても本人が自分を許せないのがよく分かった
昭和39年東京五輪で マラソン円谷幸吉はトップのアベベ選手の次に終着点の会場に入ってきたこのままの状態でトラックを回りゴールすればれば 確実に銀メダルを得られた ところが大観衆が見ているるまえで ゴール寸前でイギリスの選手に追い抜かれて 結局 銅メダルに終わった
円谷はよっぽど悔しえかったのだろう その後 しばらくして何日か経ってから自室で自殺体となって発見された もちろん自殺の真相はこれが原因かどうかはわからない 
当時学校でもこれが話題になりS先生が私にささやいた 世の中にはずいぶん贅沢な人がいるね S先生は持病があり 持病と戦いながら懸命に生きてきた それなのに円谷は人並み外れた頑健な健康の体を持ちマラソンで負けたぐらいで どうして耐えられなかったのだろうと思ったのだと思う
この話を小耳にはさんだM先生が言った Sさんそれは違うよ 円谷にとってマラソンはすべてだったのだ 人生全体だったのだ 
M先生は 出身大学でラクビー部の選手であった だからアスリートの気持ちがよくわかり 同情していたのであろう
オリンピックを見ていると選手たちが血のにじむような練習に練習を重ねて打ち込んでいるのがわかる 矢張り敗れればその痛みは計り知れないのかもしれない しかし 吉田選手もその苦しみを乗り越えてほしい