記憶の不思議

概念図です

デーケアでは朝に介護自動車が会員に家を回り一人ずつ乗せてゆく これは自動車での一筆書きである 私の次は元陸軍の将校であったKさんである Kさんの住まいは井の頭通に近所である いつも止まるKさんの家の近所に昔風の西洋館がある 西洋館にはニッチ(ここでは小さな空間の意味)がついていてその前が花壇になっていて ニッチの中にはどういうわけかこうもり傘が立ててある 最初傘を干しているのかと思ったがいつ見ても傘がある つまり こうもり傘をエックステリアとして使っているらしい なるほど おしゃれなたたずまいだなと 想う他 なんとなく懐かしい 子供のころ西洋館と言えばおとぎの国の建物みたいに感じていた グリム童話集やイソップ童話集の挿絵から この懐かしさが生まれるのであろうと思っていた

ところが突然思い出した これは父がドイツに行っていた頃 送ってきた 点々塗り絵(私の造語) にあった景色だ 点々塗り絵とは 絵が小さな点々の穴からできていて これを画用紙の上に載せて 穴に沿って鉛筆で点を打つ 全部打ったら点々でできた絵ができる 点を繋ぐとさらに塗り絵らしくなる 西洋の住まいの前庭の景色で どうしてなのか入口の階段のまえに洋傘が置いてあった このぬりえは何回か繰り返して使っていたので記憶がよみがえったのだろう それにしても約85年も前の記憶が急に戻ったのである 脳の細胞はとても不思議なものですね

★挿絵はこの家の洋傘の概念図で その下の図は 点々塗り絵の概念図です傘と階段しか描いてありません 傍に少年が立っていたような気もします